週末の物語「4月1日のできごと」
今朝、「ヒューヒュー」という音で目が覚めた。
どこかでだれかが「ヒューヒュー」と口笛を吹いているのかしら?
そう思って寝床の中で耳をすましていると、どうも存外近くからその音が聞こえていることに気づいた。
さらに耳を澄まして音の出所を探ってみたところ、なんと寝床の中から「ヒューヒュー」というその音は発せられているらしい。
春先でまだ肌寒いいものの音の出所が気になって布団をめくろうと手を動かしたところ、ふと音がやんだ。
その指先に目をやると、なんと人さし指の先にウソがいた。
いや、指先にいたのではない。
よく見ると、わたしの人さし指そのものがウソになっていたのだ。
「ウソでしょ?」と、信じられない思いでじっとウソを見ていると、ウソはまた「ヒューヒュー」と鳴き出した。
不可解な気持ちではあったが、その日一日ウソと過ごすことになった。
自分が口笛を吹いているわけではないけれど、「ヒューヒュー」という音が指先から聞こえているせいで、自分が口笛を吹くようなごきげんな気分でいるようで、ちょっと愉快だった。
しかし、そんな一日にも終わりはくる。
零時を過ぎて日付が変わった。
人さし指の先には、もうウソはいなかった。
「ヒューヒュー」という音ももう聞こえはしない。
来年の4月1日にまたウソに会えるといいなあ。