読書日記 吉本ばなな『キッチン』とカツ丼
ひさしぶりに、吉本ばなな『キッチン』を読み返しました。
初めて読んだのは中学三年生の夏休みだった気がします。当時なぜか吉本ばななと林真理子のことを混同していて、しかも『キッチン』は平凡な主婦が主人公の家庭小説だと思い込んでいました。実際は全然違うのに…。
『キッチン』を読むと、食べるということ、人間の生命力、魂のあり方といったことについて考えさせられます。
食事は生命活動を維持するために必要なことですが、ただ栄養を摂取していればいいかというとそうではないと思います。何を食べるか、どこで食べるか、誰と食べるかといった、食事を取り巻く環境もとても大事だと思います。
ところで、『キッチン』所収「満月ーキッチン2」を読むと、無性に食べたくなるものがあります。
それは、カツ丼です。
【いかに飢えていたとはいえ、私はプロだ。このカツ丼はほとんどめぐりあい、と言ってもいいような腕前だと思った。カツの肉の質といい、だしの味といい、玉子と玉ねぎの煮えぐあいといい、固めにたいたごはんの米といい、非のうちどころがない。
(吉本ばなな『キッチン』福武文庫)】
(今はなき福武文庫版です。)
スーパーでカツ丼を見かけたので、買ってきて食べました。
わたしが食べたこのカツ丼はそこそこの味だったので、『キッチン』の主人公・みかげのように「このおいしさを届けたい」と思うこともなく、また、そんな相手もなく、一人で黙々と食べました。
ああ、おいしいカツ丼が食べたい…。