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イラストレーター・山奈央のあれこれどこそこ

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桜の樹の下で上京した春を思う

 

その春は桜の記憶がない。

 

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2002年の春、わたしは上京した。

新卒で就職した会社がつらくて、我慢して1年勤めたけれど辞めた。

会社を辞めた開放感からか、なんだか自分でもよくわからない衝動に突き動かされて上京することにしたのだった。

東京の部屋に着くまでは、ただただわくわくしていた。

なのに、いざ新しい場所で新しい生活が始まると、急に気持ちが落ち込んだ。

職のあてもなく、お金もなく、友達どころか知り合いもなく、不安で不安で仕方がなかった。

これまでたいしていいことなんてなかったけど、この先もずっといいことなんてなんにもないような気がした。

前にも進めず、かといって後ろにも戻れず、一人ぼっちの部屋で自分の選択を後悔してうずくまって泣いていた。

 

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それでも、日々の営みは繰り返されていく。

ごはんを食べて、買い物に出かけて、本を読んで、お風呂に入って、眠って。

そんな日々が何日が続くうちに、「あ、これおいしいな」とか「わあ、きれいだな」とか「ふふ、おもしろいな」という瞬間が増えてきた。

そして、新緑の頃には東京での暮らしをすっかりたのしめるようになっていた。

 

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その春は桜の記憶がない。

桜は咲いていたのに、景色に目をとめる余裕がなかったのだ。

心がふさいでいて、きれいなものはその春にもあったのに気がつかなかった。

きれいなものだけじゃない。

たのしいこと、おもしろいことだってあったのに気がつかなかった。

 

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さあ、上京して15年目の春がやってきた。

ああ、桜がきれいだ。

そんなふうに、この時この場所で思えることがうれしい。

 

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